みなさんが、スーパーや直売所などでたまごを手にするとき、「このたまごは、どんな環境のなかで育った鶏から生まれたのだろう?」ということをイメージしたことはありますか?おそらく価格や生産者を意識して買う方は多いかもしれませんが、鶏の飼育環境についてまで考える方は、あまりいないのではないでしょうか。
現在、スーパーなどの市場で売られているたまごのほとんどは、大量生産でき、価格も安い「ケージ飼い(かごのなかに入れて飼われている養鶏法)」の鶏が産んだたまごです。それに対して鶏を地面に放して飼う【平飼い】で育った鶏が生むたまごがいま、その質の高さで「食への意識高い系」の人から注目を集めています。
お店で売られている「平飼いたまご」の割合は非常に少なく、一般的なたまごに比べると価格もやや高めではありますが、
「毎日のように口にするものだからこそ、品質の確かなものを摂り入れたい」
「これから成長していく子どもたちには、体にいいものを食べさせたい」
などが人気の理由のようです。
藤野屋でも、この【平飼いたまごづくり】においては、揺るぎないこだわりと自信を持って真摯に取り組んでいます。そこで今回は、当社がどのような信念のもと、平飼い養鶏を手がけているのか?他社の平飼いと違う点など、私どもが作る平飼いたまごが質が良いと言われる理由についても、詳しくお話していきたいと思います。
明確な定義のない「平飼い」。なかには作り手の「都合」を優先している養鶏場も
現在、日本の養鶏場の多くは先述した「ケージ飼い」の養鶏法を取り入れています。「ケージ飼い」は室温からエサの支給まで、すべてオートメーションで管理された環境のなかで鶏がたまごを産む手法です。
このようなケージ飼いに比べると【平飼い養鶏】を行っている養鶏施設は、かなり少数派です。
一般的に【平飼い養鶏】は、「日光が射し込む平たい地面の上で飼われ、自由に動き回って、砂浴びをし、夜になったら止まり木で寝る」という鶏本来の習性を活かした、自然に近い養鶏法だと言われています。ですが、実は「平飼い養鶏」自体に明確な定義はありません。
そのため一口に「平飼い」といっても、養鶏場のなかには…
・鶏糞の処理などの衛生管理がきちんとされておらず、ただ単に土の上で、いわゆる「放し飼い」をしている
・ウィンドウレス(窓なし)鶏舎ではあるがケージ飼いより、少し広めのスペースをとっている鶏舎を「平飼い」とうたっている
・平飼いではあるが、一坪あたりの羽数が多く、実際には鶏たちが自由に身動きがとれない
など平飼い養鶏の明確な定義がないだけに、鶏本来の習性や養鶏環境がととのっていないにもかかわらず「平飼い」とうたったたまごを生産・販売している養鶏場もあるようです。
つまり、たまごを売る側の「生産性」や「効率」を優先し、私たちからみると、あくまでも「平飼いに近いだけのスタイル」で飼育している養鶏業者でも【健康で元気な平飼いたまご】をうたっているのです。
藤野屋の平飼い養鶏はここが違う
このように、安易に「平飼いたまご」をうたっている業者があるうえに、はっきりとした定義もない。これでは、いったいどのような養鶏法のたまごを「平飼いたまご」と思えばいいのか?わからなくなってしまいますよね。
藤野屋では、前回のブログ記事でもご紹介した、平飼い養鶏の第一人者である「荒牧光」さんのノウハウをもとに、常に鶏が主役であることにこだわり、平飼い養鶏に取り組んでまいりました。この「徹底的に鶏の生活に沿った、鶏らしい暮らしを尊重する養鶏スタイル」について、ご紹介していきましょう。
ヒナの頃から「平飼い」で育てている
藤野屋で育てている鶏は、生まれてまもないヒナの頃から、太陽がサンサンと降り注ぐ明るい鶏舎のなかで育雛(いくすう)しています。
生まれたときから床の上を自由自在に飛び回ることができるので、たくましく、健康そのもの。人間の子どもに例えて言うならば、いつも家のなかで遊んでいる子どもではなく、外遊びで思いっきり体を動かしている子どものように元気いっぱいに育っているのです。
豊かな自然のめぐみを最大限に活かした鶏舎
藤野屋の平飼い鶏舎は、太陽の光が当たる時間から照射量まで、すべて計算しつくされた構造です。
南側からは常に柔らかな日差しが射し込むので、日光を全身で浴びることができ、鶏が元気に活動する源となっています。大きな窓からは、久住高原の爽やかな風がそよぎ、心地良さを感じます。
また、平飼いの鶏に与えている飲料水と鶏舎に撒布する水には、自然の浄化作用を基礎にして、バクテリアの力を借りて活性化させる「BWM技術」を採用し、鶏の健康にとっていい水を使用しています。
このように生き物にとって大切な、生命の水・太陽のエネルギー・澄んだ空気が最高な状態で整ったなかで鶏が鶏らしく過ごせるようにと、試行錯誤のすえ、すべて計算されたベストな状態の平飼い鶏舎なのです。
平飼い養鶏の要「床づくり」には妥協を許しません
一日中、太陽のめぐみを受けられるように綿密に計算されたこの鶏舎は、鶏が健康的に過ごせるというだけでなく、土そのもののコンディションも整えてくれるのです。
通常は鶏のフンをそのままにしておくと、悪臭が漂ったりハエが発生したりしますが、藤野屋の平飼い鶏舎のなかでは、床の上に落ちた鶏のフンは、ワラのなかにある菌と混ざりあい、日光に当たって乾燥することで発酵し、自然分解が行われます。
太陽の光がしっかりと降り注ぐ設計だからこそ発酵がきちんと行われ、床が乾燥することで臭いが一切ない、栄養や微生物が豊富な床に変えてくれるのです。
さらに床の上を鶏が元気よく走り回ることで、さらに菌が混ざり合い、その栄養豊富な土をつつくことで鶏の体調も整う、というプラスのサイクルを生み出してくれます。
平飼い養鶏において、妥協することのできない、この土づくりが元気な鶏を育んでいると言っても過言ではありません。
安全・安心な飼料
美味しいたまごづくりのためには、鶏が毎日食べる飼料も大切なポイント。どの平飼い鶏にもトウモロコシや麦など数々の原料をブレンドした、安全で味のバランスがとれた【配合飼料】を与えています。
この【配合飼料】に加えることで
・海藻やヨモギ、木酢液など天然物によってできている地養素が配合された【地養卵】
・ナツメグやシナモンなどのハーブをブレンドした【ハーブたまご】
・アンチエイジング効果が期待される「アスタキサンチン」が含まれた【こだわり平飼いプレミアム】
と、オリジナルのブレンド飼料を作って、同じ平飼いたまごでもそれぞれに異なる栄養価や味わいを楽しめる商品として、販売しています。
このように自由に歩ける自然な環境のなかで育った鶏は、ストレスを感じることもなく、快適な毎日を過ごすことができます。それゆえに生命力にあふれた、美味しくて安全なたまごを生むことができるのです。
アニマルウェルフェアにも通じる、藤野屋の平飼い養鶏
最近、動物愛護の観点から「アニマルウェルフェア」という考え方が普及しているのをご存知ですか?アニマルウェルフェアの概念や言葉は、もともとヨーロッパで生まれたもので、世界の動物衛生の向上を目的とする政府間機関である「国際獣疫事務局(OIE)」では、「動物が生活および死亡する環境と関連する動物の身体的及び心理的状態をいう。」と、定義されています。
参考資料:農林水産省
http://www.maff.go.jp/j/chikusan/sinko/animal_welfare.html
つまり家畜を快適な環境で飼育することによって、家畜のストレスや病気を減らすことができ、そのことが安全な畜産物の生産にもつながり、生産性の向上にも結び付く、という考え方です。
太陽と水と風にめぐまれた、より自然に近い環境のなか、ストレスフリーでのびのびと育つ「平飼い養鶏」は、まさにこの「アニマルウェルフェア」の概念に通じる養鶏法なのではないでしょうか。
まとめ
今回は平飼い養鶏のなかでも、特に藤野屋が信念を持って向き合っている取り組みや、自信を持ってお伝えしたい内容をお話してきました。
鶏にとって最適な環境である「平飼い」は、私たちが美味しいたまごを食せるだけでなく、鶏自身にとっても、できるだけ満たされた状態で幸福に生きることを可能にしてくれます。
お店で売られているたまごには、さまざまな種類があり、いったいどれを選んでよいかわからなくなることもあるかと思います。平飼いたまごを生んだ鶏が、どのような背景で育ってきたのかを知っていただくことで、たまご選びの参考にしていただければ幸いです。