たまごコラムcolumn

名脇役!?知られざる【たまごパック】に込められたこだわりとはUPDATE. 2019.11.01

たまごパック_藤野屋①

 

スーパーにならぶ、家計の万能食材である「たまご」は、言うまでもありませんが振動や落下で割れてしまうことがあるとてもデリケートな商品です。

 

そんなたまごを、さまざまな刺激からしっかりと守り、たまごを食べる人のもとへ無事届けるための名脇役とも言える存在の【たまごパック】。

 

 

たまごパックは時代の流れやニーズの変化で現在のカタチにたどりついた

 

今ではあたりまえのように存在するこのたまごパックですが、その歴史は意外と浅く、昭和30年代頃までは、農家や八百屋などで購入したたまごはカゴに入れたり新聞紙に包んだりして持ち運ぶのが一般的でした。

 

ところが、スーパーなどの量販店の発展とともに店頭にたまごを大量陳列したり、生産者から量販店へ届ける物流システムを整える必要が出てきたため、一度に効率的に運べる現在のような形のたまごパックが誕生したというわけです。

 

初めて登場したときからたまごパックの原型自体はほぼ変わっていませんが、実は時代の移り変わりとともにたまごパックメーカーが改良を重ねていることで、細かい部分が少しずつ変化し現在の形に至っています。


そこで今回のコラムでは、普段あまりにも身近に手にするたまごの「パック」について、その秘められたこだわりや想いを、藤野屋の商品にも使われているたまごパックメーカー「日本モウルド工業株式会社」の白水英雄さんに、たっぷりとお話を伺ってみました!

 

 

たまごパックの種類は大きく分けて2つ。現在の主流は【 A-PET(Aペット)】素材のパック

 

 

たまごパック_藤野屋④

 

藤野屋 >たまごパックには透明なプラスチック製のものと、紙製のものが2種類ありますがそれぞれの特徴や違いについて詳しく教えてください。またメーカーさんだからこそ語れるこだわりのポイントなどはありますか?


白水さん >まず、透明なプラスチックの素材は【A-PET(Aペット)】と言って、現在たまごパックの原料として国内でもっとも市場に出ている素材です。

 

たまごパック_藤野屋⑥


透明性が高く、耐油性・耐薬品性にもすぐれているため、たまごパックのほかにもさまざまな食品容器として利用されています。このA-PETが普及する以前は、たまごパックには「塩化ビニール製」のものが主に用いられていました。


ところが塩化ビニールは焼却の際、有害ガスが発生することから環境のことを考慮し15年ほど前からリサイクル性にすぐれ環境に優しい素材であるA-PETへと徐々に移り変わってきたのです。


A-PETのメリットは、まずパック自体の価格が安いこと。それから透明なので中のたまごの色や形状がはっきりわかることです。商品を買うときは、やはりひび割れなどがないかしっかりと目で確かめてから買いたいのが消費者心理ですからね。


また、GPセンターでの作業工程のなかでたまごをパックに詰める工程がありますが、紙製のものとくらべるとA-PETはパックづめを機械化しやすいという特徴があるので、その点は生産者にとっても大きな利点だと思います。

 

消費者目線に立った細部にわたるこだわりがいっぱい!

 

藤野屋 >パックメーカーとして、A-PETのこだわりってどんなところですか?

 

白水さん >そうですね。いろんなこだわりがありますが、まず比較的硬い素材であった、かつての塩化ビニール製のたまごパックは、スーパーのレジ袋がやぶれやすいという問題点がありました。焼却時の環境問題にくわえて、レジ袋の破損に困っている消費者からの意見や要望があったからこそ、塩化ビニールに比べてやわらかいA-PET製のたまごパックが誕生したのです。

 

藤野屋 >よくスーパーのバイヤーさんからたまごをレジ袋に入れたら、袋が破れたって言う話は聞きますもんね。

 

白水さん >そういった問題を解決するため、さらに最近のたまごパックの四隅は角張っておらず丸角になっているんです!これもやはり、レジ袋がやぶれるのを防ぐためにメーカーが改良したポイントです。

 

また、形状だけでなく開封の方法にも工夫があります。以前のたまごパックのフタはホッチキスなどで止められていたものが多かったのですが、最近では簡単にはがせるシールタイプミシン目が入ったものに変わり、よりストレスなくラクに開封できるようにと進化しました。

 

藤野屋 >ふだん、何気なく開けているたまごパックにも、パックメーカーや製造業者さんの、こだわりが散りばめられていることを知ってもらえたらって思いますよね。

 

 

見た目のよさや保存性、耐久性ならパルプモールド

 

たまごパック_藤野屋⑦

 

藤野屋 >日本モウルドさんで主に取り扱っているのが、【パルプモールド】ですよね?

 

白水さん >はい。A-PETに対して紙素材でできた【パルプモールド】は、新聞紙・雑誌・段ボール・牛乳パックなどの古紙を集めて再資源化したものが原料の紙形成品です。

 

日本モウルド工業株式会社:http://www.mold.co.jp/product/what.htm

 

紙を利用しているので、通気性や保水性がよく、たまごについた水滴なども吸ってくれますし、買ってから開封せずにそのまま冷蔵庫に入れても、鮮度を保ったまま保存することができます。しかも丈夫な素材なので衝撃に強く、ちょっとした上質感もあるのでギフトにも最適です。

 

また最近では、インテリアやラッピングなどに紙製のたまごパックをおしゃれに再利用している方も多いですし、リユース度の幅が広いのは、紙製品ならではの魅力ですね。使い終わって燃やすときも人体に有害な物質はなく、大気を汚すこともありません。最後に土に還るまで環境にやさしいのがパルプモールドです。

 

パルプモールドは「質」の高さが最大の魅力。ちょっと高級なたまごのパッケージに使われることも多い

 

藤野屋 >たまごパックのシェアとしては、やはり現在は圧倒的にA-PETが多く、パルプモールドは少数派のようですね。藤野屋でも商品によって、パッケージ素材は使い分けています。


白水さん >そうですね。パルプモールドの一番の魅力は、やはり「質」の高さです。紙製のパックはA-PETに比べてとにかく丈夫です。デリケートなたまごは、乱暴に扱ったわけでもないのに「家に帰ったらたまごが割れていた」なんてことも珍しくありませんよね。その割れやすいたまごをしっかり保護してくれる安心感があります。


そしてなにより通気性と吸湿性にすぐれているので、夏場にスーパーから持って帰る間についた結露も吸収してくれますし、鮮度を保ちながら冷蔵庫へ直接保存ができ、鮮度保持効果が高いことが特徴です。


藤野屋 >みなさんたまごをご家庭で保存するとき、よく冷蔵庫のドアポケットのところにあるたまごの収納部分に保存されると思うんですが、一番たまごにとってよい保存方法は、ドアポケットではなく冷蔵庫内の棚のほうがいいんですよね。そういう意味では、モールドパックに入れた状態でのたまごの保存方法は、鮮度を保つという点でもメリットがあります。


白水さん >そうなんです。また 商品の印象としても、紙製のたまごパックはどこか高級感を感じられる、という点もあります。


実際に、富裕層がメインターゲットの高級スーパーとして知られる【成城石井】さんがお取り扱いをしているたまご商品のパックは、なんと9割が紙素材だそうです。質がよく、高級なたまごのイメージを損なわない容器というのもパルプモールドの魅力のひとつですね。

 

 

なぜ、パルプモールドのほうが頑丈なのにA-PETが主流なのか

 

たまごパック_藤野屋②

 

藤野屋 >パルプモールドは頑丈で品質保持効果高いですけど、実際には、なぜほとんどのたまごパックにA-PETが使われていますが、なぜなんでしょうか?


白水さんA-PETが主流である最大の理由は、パルプモールドより圧倒的にコストが安いことです。


パッケージ自体にコストがかかってしまうと、当然その分がたまごの価格に反映されますよね。パルプモールドに比べて低価格のA-PETを採用することで、たまごの価格を抑えられ、結果的に消費者の家計にも優しくなるというメリットがあります。


また、もうひとつ A-PETが支持されているもうひとつの理由としては、


パックのなかには、どんなたまごが入っているのか?
ヒビや割れはないか?

 

というような消費者の心理があるようです。容器が透明であれば、中身(商品)がちゃんと見え、安心して購入できるという点があるようです。

 

藤野屋 >これは、食に意識が高い日本人の国民性ですね〜。きちんと確認してから購入したいと考えるのが自然なのかもしれませんね。

 

ちなみに海外ではパルプモールドが主流

 

白水さん >余談ですが、海外のたまごパックはほとんどが紙製です。その理由のひとつは、日本よりもたまごの価格が高いのでコスト高の紙製を採用できる点があります。

 

そのほかにも、海外にはたまごを「生」で食べる文化・習慣がないので、必ず熱処理をするため、少しくらいのひび割れなどは気にしない、という感覚があるそうです。それゆえ、中身が見えなくても丈夫な紙製パックの方が好んで使われているのではないでしょうか。

 

藤野屋 >藤野屋でも現在、シンガポールへ、平飼いたまごを輸出していますが、輸送での耐久性や現地での購買層はやはり富裕層、という点もありパルプモールドのパックを採用しています。

 

たまごパックへの並々ならぬこだわりは、たまご大好きな国民性が関係している!?

 

藤野屋 >海外ではたまごを生食しないので賞味期限も長さも日本とは違いますよね。メーカーさんによる細部にわたったたまごパックへのこだわりは、日本人ならではの国民性なのかもしれませんね。

 

たまごコラム:「日本のたまごの消費・生産事情。日本は世界でも有数のたまご大好き国!」より

 

白水さん >そうですね。日本人のたまご消費量の多さも関係しているかもしれませんね。日本特有の、たまごを「生」で食べる食文化は、徹底した衛生管理が必要なため、必然的に質の高いたまごづくりへとつながっています

 

みなさんが大好きなたまごの品質を守るためにたまごパックを割れにくい素材や構造に変えたり、さらにストレスなく扱えるように生まれ変わらせたいというメーカー各社の想いが、このような工夫を生み出しているのではないでしょうか。

 

 

どちらのたまごパックも時代の流れとともに変化してきた

 

藤野屋 >時代の移り変わりとともに、小さな進化を重ねてA-PET、パルプモールドのどちらも消費者にとって安心で使いやすいパックへと変化を遂げてきたことを改めて認識しました。メーカーさんは消費者だけでなく、たまご生産者や販売者などの動向を時代とともに見据え、把握しながら、できるだけ要望に応えようとしているんですね。


白水さん >まさにそのとおりです!たまごを購入する消費者の方のためだけでなく、たまごの生産者さんのことも含めて考え提案しています。技術革新によってさまざまな工程が機械化されているとはいえ、まだまだ養鶏場では手作業の分野が残っています。


人手不足が叫ばれるGPセンターの現場が、少しでも作業時間を短縮できるように、たとえば連結されている紙パックをできるだけ手で切り離しやすくするなど、さまざまな工夫をこらしているんですよ。


生産者をはじめ小売店・消費者・運送業に携わる方、それぞれのみなさまがより扱いやすい状態でたまごを売り、そしてたまごを味わうために、メーカーも企業努力を重ねてまいりました。ふだんは表には出ませんが(笑)、私たちはあくまで、たまご販売の裏方としてこれからも支えていきたいと思っています。

 

 

まとめ


いかがでしたか?いままでは無意識に手にとり使用後は何気なく処分していたたまごパックにも、このような背景があることを知るとちょっと見かたが変わりませんか?価格設定にも、きちんと理由があることもお分かりいただけたのではないでしょうか。

 


今度スーパーにお買い物に行ったとき、普段気にとめていなかったたまごパックにもぜひ注目してみてください。いままで気づかなかった面白い発見があるかもしれません。

 

お問合せはこちらへ

藤野屋の商品に興味をお持ちの方はお気軽にご連絡ください