連日の記録的な高温と晴天で、猛烈な暑さが続いていますね。
命にもかかわる熱中症への警戒や、農作物の管理、紫外線対策…と、夏に気をつけなければいけないことはたくさんありますが、家庭内や飲食業界で食品を扱う人は、特に「食中毒の予防」に細心の注意を払っているのではないでしょうか。
冬はノロウイルスなど、ウイルス系の食中毒に注意が必要ですが、気温や湿度が高くなる夏は、カンピロバクターや、サルモネラ菌など細菌性の食中毒に用心しなければいけません。
この猛暑の夏を健康に過ごすためにも、自分自身の体調管理はもちろん、食品の管理も慎重に行いましょう。
私たちが毎日のように料理に使っている「たまご」は、比較的日持ちするので、使い勝手が良い食材。でも実は「温度」にとっても敏感な食材なんです!
今日は食中毒が気になる今の季節だからこそ、改めてたまごの保存方法や使い方の知識を深めておきましょう。
たまごが原因の食中毒はサルモネラ菌によるものがほとんど
たまごが原因の食中毒で、最も多いのが「サルモネラ菌」によるもの。
しかし現在日本で市販されているたまごのほとんどは、生で食べることが想定され生産されているので、出荷前に殺菌消毒されていることがほとんどです。
ですので、たまごの殻からサルモネラ菌に感染することはあまりないのですが、ごく稀にたまごの中身がサルモネラ菌に侵されていることがあるので、特に生たまごを食べるときなどは、注意が必要です。
サルモネラ菌とは?
食中毒を引き起こす恐ろしいサルモネラ菌…。その潜伏場所や特徴は次のとおりです。
■サルモネラ菌の潜伏場所
サルモネラ菌は人をはじめ、牛や豚、ニワトリなどの家畜の腸の中から、川や下水など自然界の中にまで幅広く生息している細菌です。犬や猫、カメなどのペットから感染することもあります。
■特徴
乾燥に強く、熱に弱いのが特徴です。このため肉や魚、たまごなどを充分に加熱せずに食べると、食中毒を引き起こすことがあります。
■潜伏期間
サルモネラ菌が体内に入ってから、8~48時間の潜伏期間を経て発病するといわれていますが3、4日後の発病も珍しくありません。
■症状
主な症状は、急性胃腸炎です。嘔吐にはじまり腹痛、下痢、発熱などの症状が現れます。赤ちゃんや、高齢者など免疫力が弱い人は、重症化しやすく、回復も遅れる傾向があります。
参考サイト:国立感染症研究所 サルモネラ菌とは より
http://www.niid.go.jp/niid/ja/encycropedia/392-encyclopedia/409-salmonella.html
サルモネラ菌を防止するための対策
たまごが原因のサルモネラ菌食中毒の発生を防止するため、平成10年に厚生労働省は【たまごの生産者や食品加工業者、また家庭でのたまごの取り扱いについての注意事項】を策定しています。
主な内容としては…
- ・食品の製造や調理に使う、殻付きたまごの規格基準
- ・品質保持期限や、生食用であることの表示基準
- ・GPセンター(たまごをパック詰めする工場)での、洗卵や検卵について
など、保存や管理などの安全基準を細かく定め、たまごの生産段階での衛生管理について指導しています。
たまごの生産者や食品加工業者は、生産・管理する段階からこのガイドラインをきっちりと守ることがまずは何よりも大切なのです。
また、家庭内でも
- ・購入(キレイで新鮮なものを)
- ・保存(冷蔵庫で保存し、賞味期限内に消費)
・調理(十分に加熱し、生で食べる場合、ひび割れたたまごは使わない)
・食事(調理後はなるべく早く消費し、高齢者や乳幼児は生卵を避ける)
についての注意事項を示し、家庭内でも、たまごを衛生的に取り扱うようにすすめています。
この対策をきっかけに、サルモネラ菌による患者数は年々減っていきましたが、発生件数としては依然として上位に位置しているので、引き続き注意が必要です。
たまごがサルモネラ菌に侵されている割合と対処法
たまごの殻を割っても割らなくても、その見た目だけでは恐ろしいサルモネラ菌に汚染されているかどうかがわからない、というのも怖いところですよね。
実際、サルモネラ菌にたまごが汚染されている割合は【10万個に3個】という、ごくごく少ない確率だと言われています。
しかし「可能性は限りなく少なくても、ゼロではない」って思ったらやっぱりちょっと怖いですよね?
どうしても心配なときは、70℃で1分以上の加熱をすると、サルモネラ菌は死滅すると言われていますので、加熱調理すればさらに安心です。さらに、きちんと保存温度を守ることも大切です。
家庭でたまごが原因の食中毒を防ぐには?
それぞれの家庭の冷蔵庫に、必ずと言っていいほど入っている「たまご」ですが、家庭で食中毒を防ぐためにはどうすればいいのでしょう?
まず大前提となるのは、正しい保存方法を知ること。その大きなポイントとなるのは「温度」と「賞味期限」です。
たまごの保存は必ず10℃以下で!
冒頭でも述べましたが、たまごは非常に「温度」に敏感な食べ物です。
たまごの最適な保存温度は10℃以下であり、安定的に10℃以下で保存されていれば、長期保存できるという報告もあります。
特に生食を好む私たち日本人の食生活では、冷蔵庫での保存がオススメです!「生食用の殻付きたまごは10℃以下で保存することが望ましい」と公益社団法人日本食品衛生協会でも定められています。
自宅での保存方法もポイント
たまごを家庭で保存する場合も次のことに注意しておくとよいでしょう。
- ・持ち帰った卵は、すぐに冷蔵庫に入れる。
- ・持ち帰ってから、期限表示のある卵は期限表示内に消費しましょう。また、期限表示のない卵は、産卵日や包装日等を確認してできるだけ早く消費するよう心がけましょう。
- ・卵の保管は、10℃以下がめやすです。温度計を使って温度を計ると、より庫内温度の管理が正確になります。
参考資料:公益社団法人日本食品衛生協会
http://www.n-shokuei.jp/eisei/sfs_egghandling.html
例えば暑ーい夏の日、スーパーから帰ってきたあと、部屋のクーラーが効いているからといって、買ってきたたまごをテーブルの上にいつまでも置きっぱなし…というのは絶対にやめてくださいね!
【賞味期限】とは「生」で食べられる期限のこと
たまごが入っているパックの外包装や、たまご自体に印字されているのがたまごの【賞味期限】ですが、この期限とは「生で安心して食べられる期限」のことです。
特に、たまごかけごはんなど生でたまごを食べる場合は、食中毒防止の観点からも【賞味期限】には特に気をつけなくてはいけません。
たまごの【賞味期限】は、夏場(7〜9月)は採卵後16日以内、春秋(4〜6月、10〜11月)は25日以内、冬場(12〜3月)は57日以内、とされています。
これは食中毒予防のため、サルモネラ菌が繁殖しない期間を基準に設定されています。
いずれも、10℃以下の冷蔵庫の中で保存された場合の日数であり、賞味期限が過ぎても、加熱調理をすれば食べられますが、できるだけ早めに消費しましょう。
加熱しているからと安心することなかれ。割り置きや作りおきは危険!
よく、お弁当作りの下準備でたまご焼き用にたまごを割りほぐしたものや、料理で使い切れなかった溶きたまごを「もったいないし、冷蔵庫で保存しているから大丈夫だろう」と数日保存したりしたことはありませんか?
ですがこうしたたまごの割り置きや作りおき、結論からいうと、たとえ冷蔵庫に入れたとしても、そのまま何日間も置いておくのは危険なんです!むしろすぐに使い切ってしまいましょう。
なぜ、割れたたまごや割り置きたまごは危険なの?
通常、殻に覆われているたまごは中身(黄身・白身)には雑菌が入りにくい状態にありますが、殻にヒビが入ってしまったり、溶き卵にしてしまったら、そこから雑菌が入りこみ、急激に増えていきます。
特にサルモネラ菌は5℃くらいの温度でも増殖することができるので、冷蔵庫に入れておいたとしても、増殖は止められないのです。
ですのでたまごを割るのは、調理する直前が理想的です。もしも、殻が割れてしまったり、溶いたたまごが余ってしまったら、すぐに調理するようにしましょう。
生の状態でない、加熱調理した料理もその日に食べてしまいましょう
殺菌作用のある、たまごの栄養素「リゾチーム」は熱を加えることで、菌を殺す働きがなくなってしまいます。そのため、玉子焼きや目玉焼きなど火を通した料理でも、作ったその日に食べることをおすすめします。
加えて夏場のお弁当などは特に注意して、しっかりと火を通すことを心がけたいですね。
保存する場所や方法も、たまごの鮮度を左右します
たまごは温度だけでなく、保存する場所や方法によっても鮮度が変わってきます。
保存するときは、尖った方を下向きに
たまごの丸くなっているほうには、たまごの気室があり、丸いほうを下に向けると、卵黄と気室内の空気が触れやすくなって細菌が入り込む可能性が高くなるため、必ず尖ったほうを下にして保存しましょう。
尖っている方が殻が厚く、強度があるので割れにくいという理由もあります。
冷蔵庫では、奥の棚で保存
ドアポケットに、たまごの保存ケースがある冷蔵庫が多いですが実はここは、たまごにとってあまりベストな場所ではありません。冷蔵庫の扉を開け閉めするたびに温度が上がってしまいますし、開閉の衝撃でヒビ割れする可能性もあるからです。
たまごは、振動が少なく、温度変化が少ない、庫内の内側の棚に入れることをおすすめします。ちなみに、たまごが入ったパックのまま保存した方が、鮮度は長持ちします。
まとめ
いかがでしたか?たまごが原因の食中毒で多いのは、サルモネラ菌ということがお分かりになったかと思います。
厚生労働省により、サルモネラ菌食中毒を防ぐための対策がとられるようになってから、患者数は年々減少してきましたが、きちんとした知識を持たなければ、感染のリスクは避けられません。
「冷蔵庫の奥にきちんと保存」「割り置きはせず、食べる直前にたまごを割る」「生で食べるときは、必ず賞味期限内に」と、ちょっとした心がけで家庭でも、恐ろしい食中毒を防ぐことができます。
正しい知識を持って、美味しいたまごを安心して味わってくださいね。